はじめの一歩3月号(通算第96号 )
『ラブレターの中身』
戸田美帆
この頃、うちの次男坊の「命」に対する受け止め方に変化を見つけることができた。
年長児の時、祖父の死を知らされ、「じいちゃん死んだあ!」と、ただビッグニュースと捉え、近所にも聞こえたであろう大きな声で叫んだのだ。まだ人の「命」に対しては、理解しているような、していないような感じに見えた。
一方、四年生だった長男は、火葬場に行く道中、車内で歌う弟に対し、低い声で「よくお前へらへらしていられるな。お前が死んだら、その時、じいちゃんの気持ち……分かる。」と、弟を諭すように言った。年の差なのか、性質なのか……と、理解の違いを知った。
それから二年弱…
近所で親しかった方が先日亡くなられた。家族でここ1~2年習っているお囃子でお付き合いのあった姉御的存在の女性だった。
本当にショックだった。トイレで独りになった途端、涙が溢れてきた。「こんなに悲しい思いをするなら、お囃子なんか始めなければ良かったよ。もうっ!」と、私は夫と冗談話でもしなければ落ち着かない。お通夜に行く予定等、仲間と電話で相談をしていた。大変お世話になった方だったので、どなたが亡くなったのか、四歳の三男坊にも理解できていた。
その翌日だったか……
次男坊がオレンジ色の折り紙を切って、私にハート型のラブレターを書いてくれた。中央で半分折りにし、きれいなマスキングテープで止めていた。
以前、「にほんいちすき」という文字が書かれたものをもらったので、またそれかな……と、後のリアクションまで予想して開封した。
だが、はずれた。
「ぜったいに しま(な)ないでれ(ね)❤」だった。
息子は一年生。覚えたての平仮名。とっても字はきれいとは言えないし、しかも、間違っていたけれど……。
唇に力が入り、
すぐにはお礼の台詞が言えなかった。
私はいい加減な、ずぼらな母親だし、怒る時もあるけれど、息子に強く感謝した。
一生懸命に日々の生活の中で何かを学んできたのだと実感した。
色々なニュースが毎週のように人々を不安にさせている。限りのある命の中で、人として子どもにどんな背中を見せていけるのだろう…。