はじめの一歩3月号(通算第132号 )
『弟』
長田有加
私は兄と弟の三人兄弟だ。十四年前に祖母が他界し、五年前には兄が結婚して今では二児の父となった。そして弟は4月から社会人になるということで、二月から一人暮らしを始めた。昔は七人で住んでいた家も今では、祖父、父、母、私の四人となった。猫は三匹いるものの、なんだか静かで寂しい。
一人暮らしを始めた弟は、父の背中を見て育ったのか、同じ大工の道へと進んだ。三月からは研修が始まった。それと同時に私は自分の時のことを思い出した。どういった毎日になっていくのか、自分はしっかりとやっていけるのかという漠然とした不安と、社会人になるというちょっとだけの期待だった気がする。きっと弟も同じようなことを思っているのではないかと思う。ある夜、弟に電話をしてみると七時頃に帰宅し、これから晩ご飯を作って食べると言った。きっと疲れているのにすごいなという気持ちと、あの頃の自分に同じことが出来たかと考えると、とてもではないが無理そうだった。
慣れない地で新生活をスタートさせた弟。私も初心に返って、頑張ろうという気持ちにさせられた。今の弟にはとにかく無理だけはしないように、そして寝坊だけはしないようにと伝えたい。