はじめの一歩3月号(通算第108号 )
『テキトウな親友』
戸田美帆
私の高校時代、部活動で親しくなった友達がいた。
入部して間もなく、彼女は「ねえねえ!ねえねえ!」と、話しかけてくれた。同じようなにおいのする子を探していたと言ってくれた。
彼女は、背丈が私よりも1㎝だけ高かった。私たちは背が低いが、どちらがより大人っぽく見えるかと、冗談を言いながら競っていた。
彼女は底抜けに明るい。体力作りの体操やマラソンを面倒くさがることや、部活も時々さぼる為か、一見、なんでもいい加減に手を抜いて過ごしているようだった。だが、勉強は、どこでしていたのか(ごめーん!)成績がよく、四年制大学にも進学して、それでいて羨ましいことに私よりもちょっと容姿も良かった。今思えば、彼女は、私の遊びの経験値をいつもあげてくれていた。部活のない休日も、卒業してからも一緒に過ごしたことは山ほど…。
立川の駅ビル内の日東紅茶に紅茶パフェを食べに行った。渋谷の109に買い物に行った。映画を観に行った。池袋の病院でピアスをあけた。電車やバスでスキーに行った。ポケベルで、連絡をとった。夜、家の電話で長電話をした。
旅行に行った。街で知らない人に「姉妹?」と声を掛けられたことも。二人でちょっぴり背伸びをして、あちこち、まあ、よく出掛けた。懐かしいあの頃を思い出す。
そんな彼女とは、大人になり、それぞれ結婚してからも交流が続く。私が子どもを出産した時、お見舞いに病院に持ってきてくれたものは、なんと幾つものチョコレート菓子だった。母乳のためには、控えた方がいいとか、産後にはタブーといわれているそれをだ。 さすがだ!「だって、食べたいでしょ?」と言うのだ。出産経験のある彼女の言葉には、余裕を感じた。
私は、小さい頃、傘をさして水やりをしたこともある性格。彼女は、私にとって“いいかげん”で“テキトー”に肩の力を抜いてくれる最も「良い加減」で「適当」な親友だ。今日も不意に、連絡をしてみると、彼女の娘さんの高校受験が済んだところだった。もう、次の世代だ。春はお別れもあるが、出会いの季節でもある。あっぱれ友だち!