はじめの一歩12月号(通算第117号 )
『空想の世界』
須崎満喜子
赤いビニール製のケースを開くと憧れの部屋が現れる。レースのカーテンの向こうにはらせん階段。壁にはおしゃれなフレームの鏡。
やけに軽い緑色のソファーだけが自由に置けるようになっている「リカちゃんハウス」。
赤いミニのワンピースを着ている「リカちゃん」人形はやはり赤いロングブーツをはいている。
畳にふすま、ちゃぶ台に座布団の居間と、つりスカートにズック靴の昭和の時代からは程遠い世界がそこに広がっている。
子どもの頃の大好きだったおもちゃである。
祖母が敷布団、枕、掛布団を作ってくれて(日本人はやっぱり布団でしょ!)そこに寝かしたりした。
カーテンの向こうの階段を上りたいのにリカちゃんの脚はぶつかるだけ。本を取り出したくても指が引っかからない。
あまりにも本物のような立体感のある絵。
リカちゃんの手には赤チンを塗ってみたり、だんだんエスカレートしてきて、とうとう髪をチョキン!と切ってしまった。
当然髪はいつまでたっても伸びてくるわけがなく、やっぱり人形であると思い知らされた。
夢と現実が入り混じりながらも憧れの世界でよく遊んだことは、今でもはっきりと覚えている。
子どもの空想は無限に広がり、現実と対比させながら繰り返し遊ぶ楽しい世界。
もうすぐクリスマス。子どもたちの夢の世界にサンタさんは何を届けてくれるのでしょうか。