はじめの一歩2月号(通算第119号 )
『思い出の階段』
来住野 聡美
私がまだ小学生の頃のお話ですが、当時私には学校にいるときはもちろん、放課後や学校がお休みのときもいつも一緒に遊んでいた親友がいました。学校以外でその友達と待ち合わせる場所はいつも「じゃああの階段の下でね!」がお決まりでした。その階段というのは私の住んでいるあきる野市内にある武蔵五日市駅からすぐ近くの、50段程度の階段なのですが、よく私がその階段を下る前にその友達を見つけて、「おーい!今いくね!」と言いながらウキウキした気持ちで下りて行ったものでした。
中学生になるとクラスが別れてしまい、いつの間にかその階段をあまり利用しなくなり、また新しく造り直され、それと同時に思い出も壊されてしまったような気がしていたのですが、最近、その友達と約10年振りに再会することが出来たのです。
私は嬉しくなってその友達と会う前に無性にその階段を下りたくなり、散歩がてら、その子と階段で待ち合わせしてよく遊びに行った公園まで歩いてみることにしました。階段を下るうちに自然とあの階段で待ち合わせていた光景が浮かんできました。また公園への道を歩くのは本当に久しぶりで、所どころ変わっているところもありましたが、「この橋の下からよく魚が泳ぐのを見てたなぁ」、「よくここの無人休憩所で一休みしてたなぁ」と次々に懐かしくて楽しい思い出がよみがえってきました。
久しぶりに再会した親友は、優しい雰囲気や笑顔が全くあの頃と変わらず、私の話すこともちゃんと覚えててくれました。階段は当時と大分変わってしまったけれど、それでも私たちにとっては大切な思い出がたくさん残っていることに気づくことができました。