はじめの一歩4月号(通算第133号 )
『給食』
来住野 聡美
約9年前のことになりますが、私がはじめて古里保育園の給食を食べた日のことを今でもよく覚えています。その時はまだ私はこの保育園の一員ではなく学生として見学に伺った身でしたが、一口食べて「おいしい」と声に出していました。メニューはハムカツにせんきゃべつ、華風汁。華風汁とはそれが初めての出会いでしたが、それが後に古里保育園の伝統の汁物なのだと知り、納得するとともに、華風汁をこのタイミングで食べられたことにどことなく運命的なものも感じたことを覚えています。
古里保育園でお世話になるようになり、それこそ最初は「どうしてレシピ通り作っているのにあの味にならないのだろう」と悪戦苦闘し、かといえば子どもや先生方、保護者の方とお話しする中で、保育園の給食に対してお褒めの言葉をいただいた時は「私はただ昔からある保育園のレシピ通りに作っているだけで、すごいのはそのレシピを作った人であり、褒められるのはその方なのに」と、どうにもならないモヤモヤした気持ちでいっぱいでした。それでも日々の給食作りは待ってはくれず、どうにか同じように作れるようになりたくて先輩の動きを日々追うことしかできませんでした。
29年度で、古里保育園に17年お勤めされた原島芳美栄養士が定年を迎えられました。古里保育園のレシピを作り、それを今日まで作り続けて伝え続け、私がずっと背中を追ってきたベテランの先輩です。
初めて給食を食べた時、あたたかみがあって、こんな給食が食べられるなんて子どもたちは幸せだなぁと感じました。作る人の人柄が詰まっていたのだと思います。