はじめの一歩10月号(通算第103号 )
『「世界一貧しい大統領」の話から』
須﨑 満喜子
ついつい引き込まれるように見てしまった深夜の報道番組でのこと。正装の閣僚に対しノーネクタイにサンダル履き、専用旅客機は持たず他国の専用機に一緒に乗せてもらう。愛車は中古のビートル、住まいは菊の栽培や鶏の飼育をしながらの田舎暮らし。庭にはペットボトルのキャップで作られたベンチが置かれている。給料の9割は社会福祉へ寄付。一国の首脳(だった)とは思えないあまりにも庶民的で質素な暮らしをしているウルグアイ元大統領ホセ・ムヒカさんの話。「世界一貧しい大統領」が任期満了に伴い大勢の国民に惜しまれながら退任された。3年前の国連環境会議では、自分のスピーチが終わるとさっさと退席した大国の空席が目立つ中、小さな国で最後の方になって語られた心を打つスピーチが世界中で注目された。穏やかな眼差しとどこか愛嬌のある風貌とは裏腹に波乱万丈な人生を歩んできた「世界一貧しい大統領」が語る意味に深く考えさせられた。
「危機問題は環境問題ではなく政治的な危機問題。」「西洋の富裕社会が持つ同じ倣慢な消費を世界の70~80億人の人ができるほどの原料がこの地球にあるのか。」「人類は消費社会にコントロールされている。」「大量消費社会が世界を壊しているのに高価な商品や多くのものを得るために人生を放り出している。私たちは発展するためではなく幸せになるために生まれてきた。人生は短くすぐに目の前を過ぎてしまう。命より高価なものはない。」「貧乏な人とは少ししかものを持ってない人ではなく、無限の欲があり、いくらあっても満足しない人のことだ。」「発展は人類に幸福をもたらすものでなくてはならない。愛情や人間関係、子供を育てること、友達を持つこと、必要最低限のものをもつことをもたらすべきである。」「環境のために戦うのであれば、人類の幸福こそが環境の一番大切な要素である。」
24時間365日眩しいほどに明かりを照らしているコンビニ。賞味期限を過ぎればごみ箱行きの食料品。自給率が乏しい国にもかかわらず易々と捨てる矛盾した行為。ローンを組んでまで身の丈に合わない高価な商品を購入。幸せとは物を買うことと勘違いしてる・・・。「足ることを知る」を美徳とした文化を持つ日本人は魂を失ってしまったと日本人に警鐘をならした。確かに、世の中はたくさんのものであふれ返り、まだ使えるのに惜しげもなく捨てる使い捨て社会。昔、当たり前にあった日本製の品は丈夫で長持ち、壊れたら修理して使ったものだ。
「幸せとは人間のように命あるものからしかもらえない。モノは幸せにはしてくれない。モノを買う時はお金で買っているわけではない。お金を得るために使った”時間”で買っている。」
モノ<お金<時間<自由=幸せ 方程式のような思想。彼の一言一言が心に響く。お年寄りが「昔は良かった。物はないけど心が豊かだった。」と言っていた意味はこういうことなのだと恥ずかしながら今さら気づきました。