はじめの一歩第202号
『あの道この道』
北田久美
2024年春、下の娘が保育園を卒園した。
上の娘の頃から9年間、毎朝自宅から保育園までの道を歩いて通った。
朝は下の娘の機嫌が悪く、肩に荷物、片手に抱っこ、片手に上の娘の手を繋ぎ、歩けば10分かからない近い距離が永遠に続くように思えたものだった。
早く大きくならないかな、機嫌良く自分で歩いてくれるようになるのはいつかな・・・そう思っていた。
娘たちが成長してくると、毎日の道の中に桜のつぼみやセミの声、金木犀の香り、南天の実の色づき・・・と、四季の移ろいを見つけて楽しんだ。
今日は誰と遊ぶのかな、先生はもう来ているかな・・・と話ながら歩いているうちに、気付けば上の娘は小学生に、下の娘は自分で歩いて園に向かうようになっていた。
2人が小学生になった今、もうこの道を一緒に通うことはない。
“いつ大きくなるのか”と待ち遠しかった頃の私は今、“いつまで一緒にいてくれるのか”“いつまで手を繋いでくれるんだろう”と思っている。
大変で仕方なく思っていた時間は、かけがえのないものだった。
今、この時間も、いつかは「想い出」になる。一日一日を噛みしめながら、今日も私は一人で、あの道を歩いている。