活動日記
10月2日(水)20・40の法則
農作物を獣害から守るために耕作者はいろいろな手立てを講じます。電気柵で囲いをしたり罠を掛けたりします。今回は、イノシシの農作物に対する被害状況、及び被害防止の取組について、奥多摩町を事例として、現地視察、及び講師の診断を仰ぎ、効果的なイノシシの被害防止対策について検討する会が、奥多摩町で行われました。参加者は、東京都の農業振興事務所はじめ東京都の農林水産関係者、地元の生産者とJA関係者、そして奥多摩町と近隣市町村の担当者です。向学のため、私もオブザーバーとして参加させていただきました。海沢地区と丹三郎地区の二か所で実地講習会、その後、パワーポイントでの生態の確認と質疑応答が文化会館で行われました。
講師はイノシシの生態を長年研究し被害防止対策の講演を数多く行っている江口氏です。現場での具体的な説明、ビデオを使って実際のイノシシの行動を解説する姿は、誠に説得力がありました。表題の「20・40の法則」ですが、イノシシに限らず、四足動物はまず、地面から潜って作物を狙うそうです。危険を察知し、跳び越えて逃げる姿を見て、我々は跳び越えて、柵の中に侵入すると勘違いしているのだと、つまり足元からしっかりとガードしなくてはいけない、それには電気柵の幅をまず、20cmのところ、次が40cmの高さにするのがベストだそうです。これは実際のビデオを見てはっきりと確認されました。30cmでは最初は警戒しますが、しばらくすると掻い潜ってしまいました。また、せっかく電気柵を設置しても電気柵に雑草など草木が触れていると電圧が下がったり、石をひっくり返すのが得意なイノシシの好む石でネットを固定するために置いたり、土嚢を置いたりでは、効果が激減するなど貴重な示唆をいただきました。また、トタン板での囲いも高い位置だけで結束するのではなく、トタン板に近い位置で結束しないとトタン板を鼻で持ち上げられ、畑に侵入されるとの説明もありました。
時代が変わり、地球温暖化の影響など過去の常識が通用しなくなった現在、対処方法も従来の慣習だけに頼らず、新しい方法を施す必要があると江口氏は強く訴えられました。それには
1. 野生動物が嫌がる環境を作る。
2. 田畑を効果的に囲う。
3. 適切な駆除を行う。 とのことです。
山に餌が無くなったから、里に下りて畑を荒らすのではなく、里に美味しいものがあるから降りてくる、つまり、余計な作物をほったらかしにしない、折角電気柵等を施したのに、その周りに、柿やクリなどを収穫せずに、ほったらかしにしておくことで、獣たちを自ら誘引している、これが一番まずいとおっしゃっていました。しっかりと隣地の耕作者と共同して、周辺を整備しておけば、畑周辺に餌が無くなり、餌の入っている罠に入り込む、ほったらかしでは罠にかからないと・・・また、地球温暖化、電波基地の山中設置などで、緑地帯を整備され、山が冬でも緑を保ち、本来なら自然淘汰する獣害が越冬し、さらに数を増やし、里に下りてくる現象が見られる。これも獣害の被害が多くなった原因である、我々人間が野生動物を育んでしまっていると説明されました。柵を施すだけでなく獣害から作物を守る、全体の環境づくりを徹底することの大切さを学びました。